赤褐色や淡い黄色、灰緑色の帯が、幾重にも丘を横切っています。帯はまっすぐではありません。丘の斜面を斜めに横切り、ときには大きく曲がりながら、幾重にも重なって見えます。

中国・甘粛省張掖市にある彩色丘陵は、こうした色の連なりで知られる場所です。なぜ、一つの丘に異なる色が並び、それが曲線を描くように現れているのでしょうか。色の由来と帯の形には、それぞれ異なる時間の積み重なりがあります。
丘を横切る色の帯は何なのか
張掖の彩色丘陵は、「七彩丹霞」とも呼ばれています。赤褐色、黄色、灰緑色などの層が、丸みを帯びた丘の斜面に沿って現れるのが特徴です。色が地表に塗られているのではなく、もともと色の異なる岩の層が、地面の外へ姿を見せています。
ここでいう彩色丘陵は、近くにある氷溝丹霞とは区別する必要があります。氷溝丹霞では切り立った崖や険しい岩の形が目立つのに対し、彩色丘陵では比較的なだらかな丘を横切る縞模様が際立ちます。「丹霞」という共通の名が使われていても、同じ形の地形を指しているわけではありません。
彩色丘陵の帯は、岩石が層になって積み重なったことを示しています。では、その層はいつでき、なぜ隣り合う層で色が違うのでしょうか。
異なる色の地層は、白亜紀に積み重なった
彩色丘陵の主要な景観をつくる地層は、約1億1,400万~1億600万年前の前期白亜紀に形成されたとされています。これは、現在見えている丘の形ができあがった年代ではなく、そこに露出している主要な岩層の年代です。
当時、この一帯には土砂が運ばれ、繰り返し積もる環境がありました。河川や湖沼に関わる堆積環境が、地質資料から復元されています。砂や細かな泥などが積み重なり、長い時間をかけて固まることで、砂岩、シルト岩、泥岩といった堆積岩の層が生まれました。今の斜面に見える帯は、こうした層の違いを映しています。
ただし、積もった土砂がそのまま一様な色になったわけではありません。地層ごとの鉱物組成や、鉄を含む鉱物の化学的な状態の違いが、多彩な色調に関係したと考えられています。酸化・還元の条件に加え、過去の土壌形成や、堆積後に岩石が受けた変化も関わり得ます。赤い層だけを見て全体を「鉄がさびたから」と説明するのでは、黄色や灰緑色などが並ぶ理由を十分に捉えられません。
どの色帯に、どの過程がどれほど影響したかは、一つずつ完全に確定しているわけではありません。それでも、異なる性質の層が重なり、色の差を残したという大きな筋道は見えてきます。次に考えるべきなのは、積み重なった層が、なぜ現在の丘では傾き、うねって見えるのかということです。
地層が曲がり、削られて虹色の斜面になった
堆積した地層は、いつまでも水平なままとは限りません。地殻に力が加わると、重なった層が傾いたり、曲がったりします。このように地層が曲げられた構造を「褶曲(しゅうきょく)」と呼びます。張掖の彩色丘陵にも褶曲が認められ、敖河褶曲はその特徴を示す地質構造の一つです。

地層の変形は、色の違う層の向きも変えました。もとは上下に重なっていた層が傾けば、地面と交わる場所も変わります。曲がった層では、その境界も弧を描くようになります。丘を横切る縞が入り組んで見えるのは、岩の内側にある層の配列が、地表に現れているためです。
もっとも、地層が曲がるだけでは、現在の景色にはなりません。この地域では、その後の地殻運動に伴う隆起が、古い岩層を地表に近づけたと解釈されています。そして風化や流水などによる侵食が岩を削り、谷や溝、なだらかな丘の斜面をつくりながら、内部の層を露出させてきました。色のある層が存在することと、それが外から見えることは、別の出来事なのです。
張掖の縞模様は、色の異なる岩層ができた歴史だけでは説明できません。その後に地層を傾け、曲げた変形と、覆っていた岩を削って断面を見せた作用が重なって、初めて現在の帯として読み取れます。鮮やかな模様に見える曲線は、岩の中に残った地質構造そのものでもあります。
乾いた丘に残る、かつての湿潤な環境
現在の彩色丘陵は、植生が乏しく、乾燥した景観を見せています。しかし、今の気候から、色のある地層ができた時代の環境まで同じだったと考えることはできません。その違いを探る手掛かりが、岩層の中にも残されています。
張掖の前期白亜紀の地層では、「古土壌(こどじょう)」が研究されています。古土壌とは、過去の地表付近で形成された土壌が、地層の中に痕跡として残ったものです。研究では、植物の根が通った跡などを含む土壌の特徴が調べられました。これらは、土砂が単に積もるだけでなく、その場所がかつて地表となり、土壌が発達した時期もあったことを示します。
古土壌の特徴をもとにした研究では、地層が形成された時代に、現在より温暖で湿潤な時期や、湿り具合の変動があったと解釈されています。ただし、全期間を通じて同じ気候だったという意味ではなく、特定の色と特定の気候を一対一に結びつけられるわけでもありません。目に見える縞の奥には、地形だけでなく、過去の環境の変化をたどる記録も含まれているのです。
色の帯を傷つけずに残すために
こうした地層は、景観として眺められると同時に、過去の地質や環境を調べるための資料でもあります。岩の色や重なり方、曲がり方をそのまま観察できることに意味がある以上、地表の損傷を防ぐことは、見た目を守るだけの問題ではありません。
張掖では2022年に施行された「張掖七彩丹霞保護条例」により、地形を傷つける踏み付けや登攀などの行為が規制されています。景区でも観覧のための歩道や区域の管理が行われ、来訪者が地形へ無制限に立ち入ることを前提とはしていません。人が景色を見られることと、地層の状態を残すことを両立させるための取り組みです。
斜面の色帯は、遠くから見える模様であると同時に、現地に存在する岩そのものです。ひとたび地層の表面を損なえば、そこに残されていた情報も影響を受けます。だからこそ、自然の作用によって長く露出してきたものを、人の活動によって不用意に傷つけないための管理が必要なのです。
張掖の丘を横切る色を、単なる鮮やかな表面として見るのと、岩の内部に残された時間の重なりとして見るのとでは、同じ景色の意味が変わります。斜面の一本一本の帯は、かつての大地が積み重なり、姿を変え、現在の地表に現れたことを読み取る手掛かりです。その記録は、色の美しさと切り離せないかたちで、今も丘の中に残されています。
参考資料・出典
- Zhangye Colorful Hills|UNESCO World Heritage Centre(世界遺産暫定一覧表)
- Zhangye UNESCO Global Geopark|UNESCO
- Identification, characterization, and paleoclimatic implication of Early Cretaceous (Aptian-Albian) paleosol succession in Zhangye Danxia National Geopark, northwestern China|Maoほか(2022)
- 甘肃丹霞与彩丘的地貌密码|甘粛省地質調査院・劉延兵(2026)
- 张掖七彩丹霞保护条例|張掖市人民代表大会常務委員会(条文二次転載)
- 用“匠心”守护地球印记—《张掖七彩丹霞保护条例》贯彻落实情况侧记|張掖世界地質公園(2024)
- 张掖地质公园与生态环境|張掖世界地質公園(2022)





