
Credit: European Union, Copernicus Sentinel-2 imagery. Source: Kati Thanda, Australia — Copernicus / Reuse conditions: Legal notice on the use of Copernicus Sentinel Data and Service Information衛星画像の中に、巨大な白い領域が横たわっている。周囲は赤褐色の乾いた大地で、青い水面らしいものはほとんど見えない。知らずに見れば、ここを「湖」だと思うのは難しいかもしれない。
だが、オーストラリア南部の内陸に広がるこの白い地表こそ、カティ・サンダ=エア湖である。面積は約9,700平方キロメートルに及ぶオーストラリア最大の塩湖で、湖底には海面より約15メートル低い、この国の最低地点もある。それほど巨大な湖なのに、普段は大部分が乾いている。
さらに奇妙なのは、その姿が固定されていないことだ。白い塩原だった場所が、ある時には広大な水面へ変わり、衛星からもはっきり分かるほど色まで変えていく。水のない湖が、なぜ突然「湖」に戻るのだろうか。
湖なのに、水が見えない
カティ・サンダ=エア湖は、北側の大きな湖盆と南側の小さな湖盆からなる。どちらも非常に乾燥したオーストラリア内陸部にあり、海へ続く川を持っていない。流れ込んだ水の最終的な行き先が、この低地なのである。
ところが、そこに常に水がたまっているわけではない。流入が少ない時期には水面が縮小し、やがて広い湖底が露出する。そこで衛星に現れるのが、強く白く見える塩の大地だ。
「湖」という言葉から想像する景色と、普段のカティ・サンダの姿には大きな落差がある。その理由をたどるには、まず水が消えた後に何が残るのかを見る必要がある。
水だけが消え、塩が残る
カティ・サンダ=エア湖は、外海へ水を排出しない内陸流域の終点にある。流れ込んできた水は海へ抜けるのではなく、乾燥した気候の下で少しずつ蒸発していく。
水が蒸発しても、その中に溶けていた塩類まで空へ消えるわけではない。流域や地下の海成堆積物などから運ばれてきた塩分は湖底へ残り、長い時間をかけて濃縮されてきた。現在の湖底には、場所によっておよそ20〜45センチメートルの塩殻があるとされる。
洪水で新しい水が入ると、この塩は再び溶け出す。水が多い時期には塩分が薄まり、その後、蒸発が流入を上回るにつれて塩分濃度は上がっていく。最後にはまた塩が析出し、白い湖底が現れる。
ここまでなら、カティ・サンダが乾いている理由はそれほど不可思議ではない。むしろ次の疑問の方が大きい。これほど水を失いやすい場所が、どうして時には巨大な湖へ変わるほどの水を得られるのか。
水は、はるか遠くからやってくる
答えを探すには、湖だけを見ていてはいけない。
カティ・サンダ=エア湖が受け止めるレイク・エア盆地は、約120万平方キロメートル。オーストラリア大陸のおよそ6分の1を占め、南オーストラリア州だけでなく、クイーンズランド州やノーザンテリトリー、ニューサウスウェールズ州の一部まで広がっている。
湖を満たす水の重要な供給源は、こうした遠方に降る雨だ。特に北や北東の地域で大雨が降ると、増水した川がChannel Countryと呼ばれる広大な平坦地を進み、Diamantina–Warburton水系やCooper Creekなどを通って南西へ向かう。
その移動は、一本の太い川が湖まで一直線に流れる姿とは違う。水は無数の水路に分かれ、氾濫原へ広がり、乾いた大地を少しずつ進む。途中で地面へ染み込み、蒸発し、多くは湖まで届かない。
それでも大規模な豪雨が重なると、残った水が何百キロメートルもの距離を越えてカティ・サンダへ到達する。2025年には、クイーンズランド州で発生した洪水の水が数か月をかけて内陸を移動し、湖へ流れ込む様子を人工衛星が追跡した。

白い湖底を水面へ変える出来事は、湖の真上だけで起きているのではない。衛星から視野を広げると、カティ・サンダは大陸規模の水の旅が最後にたどり着く場所として見えてくる。
青、緑、赤、そして再び白へ
水が届いた後も、湖の姿は一定ではない。
カティ・サンダは広大だが非常に浅い。そのため、水量が少し変化しただけでも水面の広がり方は大きく変わる。河川からの流入が弱まり、強い蒸発が続けば、広がった水は次第に縮小していく。
その過程は衛星画像の色にも現れる。2025年12月にLandsat 8が撮影した自然色画像では、水が残っていたBelt Bayが緑がかった色、Madigan Gulfが赤みを帯びた色として写った。

NASA Earth Observatory image by Lauren Dauphin, using Landsat data from the U.S. Geological Survey. Source: NASA Earth Observatory — Lake Eyre Blushes / Usage: NASA Images and Media Usage GuidelinesNASAは、第三者著作権表
色の違いには水深や塩分、微生物など複数の条件が関係する。蒸発が進んで塩分が高くなると、塩分の高い環境を好む微生物が増え、赤やピンク、オレンジ色に見える水面を作ることもある。ただし、衛星画像だけからそこに存在する微生物の種類まで断定することはできない。
もう一つ注意したいのが、衛星画像の「色」そのものだ。自然色画像もあれば、人の目では見えない波長を組み合わせた疑似カラー画像もある。疑似カラーでは、水や植生、乾いた塩面を判別しやすくするため、肉眼とは異なる色で表現される。
だからカティ・サンダの衛星画像は、単に奇妙な色を楽しむ写真ではない。いつ、どこまで水が広がり、どの場所から乾いていったのかを読み取る観測記録でもある。
衛星は「景色」ではなく水量まで測り始めた
広大で浅く、人が簡単には近づけない湖では、「どれほど水が入ったのか」を測ること自体が簡単ではない。
そこで重要になっているのが人工衛星だ。LandsatやSentinelの画像を時系列で比べれば、水面がどこまで拡大し、どこから縮小したのかを確認できる。近年は、それだけではなく水面の高さも含めて湖を立体的に測ろうとする研究が進んでいる。
2026年に『Journal of Hydrology』へ発表された研究では、SWOT衛星とSentinel-3などの観測データを組み合わせ、2024年に起きたカティ・サンダへの流入を解析した。研究では、水面の広がりだけでなく水深や貯水量の変化を推定し、現地観測の乏しい巨大な一時湖を衛星から監視する方法が検討されている。
「宇宙から湖を見る」という言葉の意味は、ここで少し変わる。衛星は白と青の模様を撮影しているだけではない。地上から全貌をつかみにくい巨大な湖の変化を、数値として追い始めている。
しかし衛星が記録している現在の白い塩原を、この土地の完成した姿だと考えるのも正しくない。
かつて、ここにはもっと深い湖があった
現在のカティ・サンダは、水が入っては消える一時的な塩湖である。ところが湖岸や堆積物を調べると、過去にはまったく違う水環境が存在していた痕跡が残っている。
2022年に発表された古環境研究では、湖岸に残された約7万1千年前の堆積物から、当時の湖が最大でおよそ12メートルの水深を持っていたことが示された。さらに約4万9千年前には、現在とは大きく異なる高水位の湖が存在した時期があったと考えられている。

より古い研究を含めると、カティ・サンダ周辺では湿潤な時期と乾燥した時期が繰り返され、湖が深く広がる時代と、乾いた湖底が露出する時代が交互に現れてきたことが分かる。現在に近い一時的なplaya湖の状態が成立したのは、およそ3,000〜4,000年前とする研究もある。
数か月単位で衛星画像を比較すると、白い湖底と水面が入れ替わる。数万年という時間で見ると、その「通常の姿」そのものまで入れ替わってきた。
カティ・サンダは水が入った時だけ変化する湖ではない。周囲の堆積物まで含めれば、オーストラリア内陸部の降水やモンスーンがどのように変わってきたのかを残す、巨大な記録でもある。
今も、白い湖は姿を変えている
こうした変化は、遠い地質時代だけの話ではない。
2025年には北東部で発生した大規模洪水の水が長い距離を移動し、カティ・サンダへ到達した。翌2026年にも北方からの洪水と湖周辺の多雨が重なり、6月には湖が数十年でも特に水量の多い状態になっていると報じられた。現地関係者による推定では、その時点で湖はおよそ80%の容量に達していた。
水が増えれば鳥類をはじめとする生き物が集まり、乾いた塩原だった場所が一時的な湿地へ変わる。そして流入が止まり、蒸発が続けば、再び塩分が高まり、湖面は縮小していく。何度も繰り返されてきた変化を、現在は衛星が上空から連続的に記録している。
この場所と周辺の土地は、ArabanaとDieriの人々にとって深い文化的意味を持つ。現在のKati Thanda–Lake Eyre National Parkも、こうした文化的価値と自然環境を守りながら管理されている。湖底へのレクリエーション目的の立入りは認められておらず、訪問者は指定された場所や上空から湖を見ることになる。
2026年10月3日の確認時点では、南オーストラリア州国立公園局はHalligan Bayへ向かうPAR 13を4WD向けに開放中としている。ただし、大きな洗掘や水たまりを避ける迂回箇所があるため注意が必要で、訪問前には最新の道路・公園情報を確認する必要がある。
最初に衛星画像を見た時、白い領域は「何もない場所」のように見えたかもしれない。
けれど、その白さは水が存在しなかったことを意味しているのではない。遠い土地に降った雨が大陸を渡り、湖へ届き、蒸発し、その痕跡として塩を残した結果でもある。その下や周囲には、現在よりずっと深かった湖の記録まで眠っている。
次に宇宙からカティ・サンダを見る時、白い湖底はもう静止した空白には見えないだろう。そこに写っているのは、オーストラリア内陸部を動く水と、何万年にもわたって変わり続けてきた気候の、ほんの一瞬の姿である。
参考資料・出典
- Australian Government Department of Climate Change, Energy, the Environment and Water – About the Lake Eyre Basin
- Geoscience Australia – Landforms from Space
- South Australian Department for Environment and Water – Alternative water: Northern South Australia
- National Parks and Wildlife Service South Australia – Kati Thanda-Lake Eyre National Park
- NASA Earth Observatory – Water Pours Into Australia’s Lake Eyre
- NASA Earth Observatory – Lake Eyre Blushes
- Rai, A. K. et al. – Volumetric analysis of a playa lake using SWOT data: An improved understanding of the inflows to Kati Thanda-Lake Eyre
- Cohen, T. J. et al. – Late Quaternary climate change in Australia’s arid interior: Evidence from Kati Thanda–Lake Eyre
- Magee, J. W. et al. – Lake Eyre palaeohydrology from 60 ka to the present: beach ridges and glacial maximum aridity
- ABC News – Water levels at Kati Thanda-Lake Eyre ‘best’ locals have seen, 27 June 2026





