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RAFメンウィズヒルとは?白い球体が並ぶ英米情報基地の正体

RAFメンウィズヒル 白い球体の秘密 謎の人工物・巨大構造物

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白い球体が並ぶRAFメンウィズヒル――イギリスにある「見えている秘密基地」は何をしているのか

イングランド北部、ノース・ヨークシャー州ハロゲート近郊に、奇妙な白い球体がいくつも並ぶ軍事施設がある。RAFメンウィズヒル(RAF Menwith Hill)だ。

遠くからでも目を引く球体の正体は、レドーム(radome)と呼ばれるアンテナの覆いである。外から見ると同じような白い球体に見えるが、その内部にある装置や役割まで同じとは限らない。そして、この「見えているのに中身が分からない」という性質こそ、メンウィズヒルを長年謎めいた存在にしてきた。

しばしば「巨大な盗聴基地」や「世界最大級の監視施設」と語られるが、公的資料を追うと、もっと興味深い姿が見えてくる。ここは何も分からない秘密基地ではない。むしろ、政府が認めている事実と、意図的に明かしていない領域の境界がはっきり見える場所なのである。

ノース・ヨークシャーの田園地帯の向こうに白いレドーム群が並ぶRAFメンウィズヒル
ノース・ヨークシャーの田園地帯から望むRAFメンウィズヒル。白い球状の構造物はアンテナを覆うレドーム。
写真:RAF Menwith Hill from Coldstones Cut/作者:Jooniur/ライセンス:CC BY-SA 4.0

白い球体そのものがセンサーではない

メンウィズヒルの景観を特徴づけるのは、多数のレドームだ。

米航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration、NASA)の技術資料では、レドームは電波を透過する素材でつくられ、アンテナを風雨や雪、氷などから守るための構造物と説明されている。

つまり、外から見えている白い球体自体が巨大な受信機なのではない。実際のアンテナはその内側にある。

この構造にはもう一つ重要な意味がある。レドームの外側からは、内部アンテナの形状や向きが分かりにくい。そのため、基地を外から眺めても「どの球体が、どの衛星や通信システムに関係しているのか」を判別することはできない。

しかも、現在の基地全体にレドームが何基あるのかについて、最新の公的資料から確定できる総数は見つからない。2001年の欧州議会資料には当時およそ30基の衛星アンテナがあったとの記述があり、2019年にはさらに3基のレドームと関連建物の建設が許可されている。しかし、それらを単純に足して現在の総数とみなすことはできない。

「数十基の白い球体が並ぶ」という外観は確かでも、そのすべての役割を一覧にできるほど情報が公開されているわけではない。

2011年に上空から撮影されたRAFメンウィズヒルの敷地と多数の白いレドーム
2011年に上空から撮影されたRAFメンウィズヒル。白いレドームが敷地内に点在している。現在の施設配置を示す写真ではない。
写真:RAF Menwith Hill, from a helicopter/作者:Mark Morton/ライセンス:CC BY-SA 2.0

英国空軍基地の名を持つが、運用の仕組みは少し複雑

現在の米空軍公式サイトは、メンウィズヒルを英国と米国に対する「通信・情報支援」を行う施設と説明している。

土地と施設の所有関係も特徴的だ。英国政府の議会答弁によれば、土地は英国防省が所有し、北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty Organization、NATO)の軍地位協定に基づいて米国側に提供されている。基地で行われる活動についても、英国政府は自国政府の認識と同意の下で実施されるとしている。

現在の名称になったのは1996年2月19日。それ以前はメンウィズヒル・ステーション(Menwith Hill Station)と呼ばれていた。

名称に英国空軍を示す略称が付いたことで、より英国空軍基地らしくなったように見える。しかし当時の英国政府は、この改称を米軍に提供されている他の英国空軍施設と名称をそろえるための行政上の変更と説明した。つまり、名前が変わったからといって、この日に基地の所有権や主権が移ったわけではない。

メンウィズヒルの分かりにくさは、まさにここにある。英国領内の英国防省所有施設でありながら、米国の軍・情報組織と深く結びついているのである。

公文書に現れる三つの英米情報機関

メンウィズヒルと米国家安全保障局(National Security Agency、NSA)の関係は、単なる推測ではない。

英国政府は1995年の議会答弁で、1966年に英国政府の同意を得てメンウィズヒルが米国家安全保障局のフィールド要素になったと説明している。翌1996年の貴族院答弁でも、同基地を米国家安全保障局のフィールド・ステーションと明記している。

英国側では、英政府通信本部(Government Communications Headquarters、GCHQ)との関係も公文書に残る。1994年、英国政府はメンウィズヒルに「相当規模」の英政府通信本部の存在があることを認めた。ただし、その詳しい配置や活動内容については明らかにしなかった。

さらに、米国家偵察局(National Reconnaissance Office、NRO)の公式資料には、2008年に同局がメンウィズヒルでの存在を公に認めたとの記述がある。

米国家安全保障局、英政府通信本部、米国家偵察局。通信情報、暗号・情報活動、偵察衛星を担う英米の組織が、一つの基地をめぐる公的記録の中にそろって登場する。

ただし、ここから「現在、各組織が何人いて、どのアンテナを使い、どの国の何を収集している」とまで話を進めることはできない。現在の組織別人数や個々の収集対象、アンテナごとの任務は公開されていないからだ。

少なくとも3基は役割が公表されている――ミサイル発射を知らせる早期警戒システム

すべてのレドームの役割が謎というわけではない。

英国政府は2021年の議会答弁で、基地内の3基のレドームが宇宙配備赤外線システム(Space-Based Infrared System、SBIRS)の一部であることを明らかにしている。

宇宙配備赤外線システムは、弾道ミサイルの発射を探知して早期警戒情報を提供する仕組みだ。英国政府は1997年3月、その欧州リレー地上局をメンウィズヒルに置くことを承認し、同基地の関連システムは2011年に運用状態に入ったと説明している。

ここで誤解しやすいのが、「ミサイル防衛に関係するなら、ここから迎撃するのではないか」という点である。

英国政府は過去の議会答弁で、このシステムはミサイル発射を探知して情報を提供する早期警戒システムであり、それ自体が物理的な防護を提供するものではないと説明している。

つまり、メンウィズヒルにある公開済みの関連設備は、ミサイルを撃ち落とす兵器ではない。発射を捉える「目」に当たるのは宇宙配備赤外線システム全体の宇宙側センサーであり、メンウィズヒルは公開資料上、その警戒情報を受け渡す欧州リレー地上局として位置づけられている。

多数の白い球体のうち、政府が用途を明示しているものが少なくとも3基ある。この事実は、「すべてのレドームが通信傍受用だ」という単純なイメージが正しくないことも示している。

エシュロンとの関係は、どこまで確かなのか

メンウィズヒルを語るとき、エシュロン(ECHELON)の名がしばしば登場する。

2001年、欧州議会は世界規模の民間・商業通信傍受システムについて特別調査を行い、その報告書の中でメンウィズヒルを通信衛星からの通信傍受に関わる主要施設の一つとして扱った。

このため、「メンウィズヒルとエシュロンの関係」は単なるネット上の噂だけで生まれた話ではない。欧州議会が正式な調査対象として扱った歴史がある。

ただし、その報告は2001年時点のものだ。そこに記された装置、ネットワーク、組織分担が2026年現在も同じ形で続いているとは限らない。また、現在の米英政府は個々の通信傍受対象や具体的な収集方法を公表していない。

したがって、「メンウィズヒルは現在もエシュロンですべての通信を傍受している」といった言い方は行き過ぎになる。

確実に言えるのは、メンウィズヒルが長年、通信情報活動をめぐる国際的な議論の中心に置かれてきたということだ。

巨大なのは球体だけではない

基地の面積については、2023年の英国議会答弁で220.289ヘクタールとされている。約2.20平方キロメートルに相当する。

人員については、時点と集計方法に注意が必要だ。2020年8月時点の議会答弁では、米英の軍人、文民、契約業者を合わせて約1,090人が勤務していた。一方、2024年の英国防省資料では「米国防総省要員」が1,000人とされているが、分類方法が異なるため単純比較はできない。

さらに2026年、英国政府は米訪問軍の基地別人数について、安全保障上の理由から現在は公表しない方針を示した。

この変化もメンウィズヒルらしい。ある時点ではかなり細かな人員内訳まで議会資料に現れる一方、現在は同じ粒度の情報が公開されない。

2026年に更新された空の制限

メンウィズヒルは冷戦の遺物として残っているだけの施設ではない。

2026年2月19日、英国では国防施設上空の無人航空機飛行を制限する新しい法令が施行された。この法令は2024年の規則を廃止して置き換えるもので、メンウィズヒルも引き続き対象に含まれている。法令で定められた区域では、例外や許可がある場合を除き、平均海面から1,200フィート未満で無人航空機を飛行させることが禁止される。

基地の正確な内部任務がすべて公開されなくても、国家安全保障上の重要施設として現在も扱われていることは、こうした最新の法令から確認できる。

本当の「謎」は、何も分からないことではない

メンウィズヒルについて調べると、意外なほど多くのことが公文書から確認できる。

英国防省が土地を所有していること。米国側に提供されていること。米国家安全保障局との歴史的関係。英政府通信本部の存在。米国家偵察局が自ら存在を公認した場所。3基の宇宙配備赤外線システム関連レドーム。220ヘクタールを超える敷地。そして2026年にも続く厳しい航空上の保護。

その一方で、現在の各レドームの用途、通信収集の対象、組織別の最新人員、特定の軍事作戦にどのような情報を提供したのかは明らかにされていない。

だから、この場所を「何をしているか完全に分からない秘密基地」と呼ぶのは少し違う。

メンウィズヒルの異様さは、白い球体が大量に並んでいることだけではない。政府が公開している輪郭は驚くほど具体的なのに、その輪郭の内側に入った途端、情報が急に途切れる。

見えているのに、中身は見えない。

その境界そのものが、メンウィズヒルという巨大施設のもっとも興味深い部分なのである。

参考資料・出典

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