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クリアウォーター湖クレーター群|双子に見えて1億8000万年違う衝突跡

クリアウォーター湖の双子クレーター 衛星画像で見る奇景

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衛星画像では「双子」なのに、形成年代は約1億8000万年違う——カナダ・クリアウォーター湖クレーター群

カナダ・ケベック州北部のクリアウォーター湖クレーター群を捉えた衛星画像。
衛星画像では、二つの巨大な円形構造が隣り合って見える。西側には特徴的な島の輪も確認できる。
画像クレジット:Clearwater Lakes Landsat image/NASA・USGS EarthExplorer/NASA Images and Media Usage Guidelines

カナダ北部の湖を衛星画像で眺めると、巨大な円が二つ、ほとんど肩を寄せるように並んでいる。どちらも天体衝突で生まれたクレーターで、配置だけを見れば「同じときに二つの天体が落ちた」と考えたくなる形だ。

実際、クリアウォーター湖クレーター群(Clearwater Lake impact structures)は、長いあいだ「連星小惑星が同時に衝突してできた二重クレーター」の代表例として扱われてきた。

ところが、年代測定の再検討が進むにつれ、その物語は崩れた。

西側のクレーターは約2億8620万年前。東側は約4億6000万〜4億7000万年前。

二つの円ができた時代には、およそ1億8000万年もの隔たりがあったのである。

衛星画像では双子にしか見えない。だが地質学的には、まったく別の時代に生まれた二つの衝突構造だった。

北カナダに並ぶ二つの巨大な円

クリアウォーター湖クレーター群は、カナダ・ケベック州北部のヌナヴィク地方にある。

湖そのものの現在の公式名は Lac Wiyâshâkimî(クリー語の伝統名を採用した現在の公式湖名)である。ケベック州地名委員会は、クリー語の名称を「澄んだ水域」にあたる意味として説明している。2016年、それまでのフランス語名に代わって、この先住民由来の名称が正式化された。

湖全体は東西に長く、長さ約71キロ、幅約33キロ。面積は公的資料によって差があるが、およそ1,200平方キロメートルに達する。

その中に、西側のクリアウォーター・ウェスト(Clearwater West)と、東側のクリアウォーター・イースト(Clearwater East)という二つの衝突構造が並んでいる。

西側の代表直径は約36キロ、東側は約26キロ。どちらも、都市一つがすっぽり入るほどの規模だ。

とりわけ衛星画像で目を引くのは西側である。湖の内部に、ほぼ円を描くような島々の帯が浮かんでいる。この島列は偶然の配置ではない。衝突によってつくられたクレーター内部の同心円状構造と、その後の長い侵食差を反映した地形である。

かつては「二重衝突」の教科書的な例だった

1985年にスペースシャトルから撮影されたクリアウォーター湖。
1985年にスペースシャトルから撮影された二つの円形衝突構造。写真の見た目だけなら、同じ出来事で形成されたと考えたくなる配置だ。
写真クレジット:STS61A-35-86 Clearwater Lakes/Earth Science and Remote Sensing Unit, NASA Johnson Space Center/NASA astronaut photography FAQ

二つの巨大な円が隣り合っている。

しかも、研究が進むにつれて両方から衝突を示す証拠が見つかった。

1960年代には、二つの天体がほぼ同時に落下した二重衝突という考えが提案され、その後も長く支持された。

想定されたのは、互いの周囲を回る二つの小天体、つまり連星小惑星である。

もしそれが地球に突入すれば、近接した二つのクレーターをほぼ同時に残す可能性がある。クリアウォーター湖は、その地球上の代表例だと思われた。

一部の初期年代測定も、この解釈を補強するように見えた。東西のクレーターがともに約2億9000万年前のものと解釈できる結果があったためである。

こうして「隣り合う二つの巨大クレーターは同時に生まれた」という物語は、約半世紀にわたり定着した。

年代測定が「双子説」を壊した

実は、東西で異なる年代を示す ^40Ar/^39Ar 年代は1990年の研究ですでに報告されていた。

しかし、二重衝突説を大きく揺るがしたのが、2015年に発表された衝突溶融岩の再測定だった。

西側では約2億8620万年前という前期ペルム紀の年代が得られた。

一方、東側の試料が示したのは約4億6000万〜4億7000万年前。中期オルドビス紀である。

差は、およそ1億8000万年。

人類はもちろん、恐竜が現れるよりもはるか以前の地質時代同士で比べても、同じ衝突イベントとは考えられないほど離れている。

しかも、この結論は一つの測定だけに依存していない。その後の別の年代測定法、古地磁気、地球化学的研究も、二つが別々の時代に形成されたという見方と整合する。

現在では、二つを「同時にできた双子クレーター」とみなす説は支持されていない。

地図上では隣同士でも、地質学的には約1億8000万年の時間が横たわっているのである。

二つとも本当に衝突クレーターなのか

ここで注意したいのは、「二重衝突説が否定された」ことと、「衝突クレーターであることが否定された」ことはまったく別だという点だ。

二つとも、天体衝突によってできた構造であること自体は、強い証拠で裏付けられている。

西側では、シャッターコーン、衝撃変成を受けた石英、衝突角礫岩、衝突溶融岩などが確認されている。これらは、地殻が通常の地質作用では生じにくい極端な衝撃圧力を受けたことを示す。

東側でも、ボーリングコアから衝撃変成岩や衝突溶融岩が確認されている。

ただし東側には一つ厄介な点がある。

衝突構造の大部分が湖の下に沈んでいるのだ。

そのため、研究者が直接露頭を調べられる西側に比べ、東側の内部を知る手掛かりは限られている。1960年代に掘削された2本のボーリングコアは、現在でも東側の成り立ちを探る重要な資料である。

衛星画像では東西どちらもよく見えるのに、地上に降りると研究条件はまるで違う。

東側は「4億7000万年前の隕石シャワー」と関係するのか

東側の年代が約4億6000万〜4億7000万年前と分かったことで、別の興味深い可能性も浮かんだ。

この頃、太陽系ではLコンドライト(L chondrite)母天体と呼ばれる小惑星が大規模に破砕され、その後、地球に到達する隕石物質が増えたと考えられている。

東側クレーターの年代は、この出来事に近い。

さらに、衝突溶融岩の地球化学的研究では、衝突した天体が普通コンドライト系で、Lコンドライトに近かった可能性も論じられている。

そのため、東側クレーターがこのオルドビス紀の小惑星破砕事件と関係していたのではないか、という仮説が研究されている。

ただし、これはまだ断定できる話ではない。

「4億7000万年前の小惑星破砕で生じた特定の破片が、確実に東側を作った」とまでは言えない。年代と地球化学的手掛かりが興味深く重なる、という段階である。

西側の「島の輪」は、単純なピークリングではない

衛星画像で最も印象的な西側の島々も、単なる景観ではない。

巨大な天体が地面に衝突すると、一時的に大きな空洞が掘られる。しかし直径数十キロ規模のクレーターでは、その空洞は単純なボウル形のままではいられない。

衝突後、地殻は大きく崩れ、中心部では構造的な隆起が起こり、クレーター内部は複雑に変形する。

西側では現在、中心からおよそ6〜11キロの位置に島の輪が露出し、そこには衝突溶融岩、衝突角礫岩、衝撃変成を受けた基盤岩などが見られる。

ただし、現在見えているこの島の輪を「衝突直後のピークリングがそのまま残ったもの」と考えるのは正確ではない。

2017年の研究では、現在の環状地形は主として侵食に比較的強い衝突溶融岩などによって形づくられ、クレーター改変過程で生じた同心円状構造と、その後の侵食を反映している可能性が示されている。

同じ研究は、西側クレーターの本来の最終直径を35〜40キロと推定し、その後に最大約2キロの差別侵食が起きた可能性を示している。

つまり、現在の湖岸線だけを見て、衝突直後のクレーター形状をそのまま読み取ることはできない。

むしろ衛星画像には、2億年以上の侵食によって露出した巨大衝突構造の内部が現れているのである。

「見た目が似ている」は、地質学では証拠にならない

クリアウォーター湖クレーター群の面白さは、二つの巨大な円そのものだけではない。

本当に興味深いのは、人間がその形をどう解釈してきたかにある。

二つのクレーターはあまりにも近く、あまりにもよく似ていた。

だから、同時にできたと考えることには十分な理由があった。

ところが岩石に残った放射性同位体の時計を読み直すと、二つは別々の時代にできていた。

衛星画像が嘘をついていたわけではない。

画像はただ、二つの円が並んでいるという事実を正確に見せていた。

「だから同時にできたはずだ」という物語を加えたのは人間の側だった。

そして、その物語を修正したのもまた、岩石に残された証拠だった。

いまも残る古い説明

興味深いことに、現在でも一部の公式観光ページには、二つのクレーターがほぼ同時にできたという古い説明が残っている。

ヌナヴィク公園のページには、二つの天体が約2億8700万年前に衝突したとする説明がある一方、別ページには二つの衝突が2000万年離れていたとする記述もある。

どちらも、現在の主要な年代研究が示す約1億8000万年の差とは一致しない。

研究史が長い場所ほど、古い定説が一般向け情報に残り続けることがある。

クリアウォーター湖は、その典型例でもある。

衛星画像だけを見れば「双子クレーター」と呼びたくなる。

しかし現在の研究に基づけば、より正確なのは「双子のように見える、別々の衝突クレーター」だ。

数十キロという空間的な近さと、約1億8000万年という時間的な遠さ。

その落差こそ、この場所を単なる巨大クレーター以上に不思議な風景にしている。

参考資料・出典

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