中国・雲南省には、木々の代わりに巨大な岩の柱が立ち並んでいるように見える場所があります。鋭くとがった岩峰が重なり、細い隙間の向こうにも、さらに別の岩峰が続く景観です。そこは「石林」と呼ばれています。
岩が一本ずつ地面から伸びたような姿は、どのようにして生まれたのでしょうか。森を思わせる見た目だけでは、その答えは分かりません。
石の柱が立ち並ぶ、雲南の「森」

雲南石林は、中国雲南省の石林イ族自治県に広がるカルスト地形の一群です。カルストとは、石灰岩などの岩石が水に溶かされることで生じる地形を指します。ここではその岩石が、剣のようにとがった峰や塔のような柱、ときにはキノコを思わせる形になって残っています。
岩峰の間には狭い通路のような隙間が走り、岩の表面にも溝や凹凸が刻まれています。大石林と呼ばれる地区には、高さ20~50メートルに達する岩柱群があります。ただし、これは大石林の代表的な岩柱についての数値で、雲南石林のすべての岩が同じ高さという意味ではありません。
不思議なのは、高くそびえることだけではありません。もとはつながっていたはずの岩が、なぜこれほど細く、複雑な輪郭を持つようになったのでしょう。その手掛かりを探すには、まず岩石そのものの来歴までさかのぼる必要があります。
柱になる前の石は、浅い海にあった
今、陸上にそびえている石林の岩石は、かつて浅い海の環境で形成されました。古生代の海にたまった炭酸塩を含む堆積物が、長い年月のうちに石灰岩やドロマイト質の岩石を含む地層となったのです。このときできたのは、現在見るような細長い石柱ではなく、その材料になる岩石でした。
その後、地殻変動や隆起を経て、かつて海にあった岩石は陸上で水や地表環境の作用を受けるようになります。海で生まれた地層が、今度は陸の地形へと変わっていく条件が整いました。
けれども、石灰岩が陸上へ移ったというだけでは、森のような岩柱の形は説明できません。広がった岩石のどの部分が失われ、どの部分が残ったのか。重要な変化は、目に見える地表だけで起きたわけではありませんでした。
見えない地面の下で、岩柱の形が育った
石林の岩柱は、地上に出てから雨に削られただけでできたのでしょうか。大石林の岩面の形を調べた研究では、そうした単純な説明では捉えきれない形成過程が読み取られています。岩の表面に残る特徴から、土壌や堆積物に覆われていた段階にも、水が岩石を溶かす「溶食」が進んでいたと考えられています。
地面の下でも、水は岩の割れ目や、岩石と周囲の土壌・堆積物が接する部分に働きます。岩の全体が同じように失われるのではなく、割れ目や岩面に沿って溶食が進むことで、周囲から分かれた柱状の形が発達していったという解釈です。つまり、今は空気に触れている岩柱の輪郭にも、かつて地中にあった時代の働きが刻まれているのです。
これは岩面の形状を手掛かりに復元した研究上の説明であり、すべての岩柱が全く同じ順番で形づくられたと確定したものではありません。それでも、岩柱の成立を考えるときに地中の環境を外せないという点は、目の前の景観の見方を大きく変えます。では、土や堆積物に覆われていた岩は、どうして現在のように姿を現したのでしょうか。
地上に姿を現しても、変化は終わらない
柱の周囲にあった土壌や堆積物が低下し、取り除かれていくと、それまで覆われていた岩の部分が地表に現れます。岩面の研究は、こうした露出を経た後にも、雨水などによる溶食や侵食が表面の形を変えてきたと解釈しています。
地上に出た岩峰の表面には、雨水の流れによる溝や細かな凹凸が刻まれていきます。現在の岩面には、覆われていた時期に発達した形と、露出後に変化した形とが重なっていると考えられるのです。地中での働きか、地上での働きか、どちらか一方だけで石林を説明することはできません。
しかも、すべての岩峰が一斉に露出し、同じ速度で変化したと断定する根拠はありません。石林をつくった過程には、場所ごとの差と、気の遠くなるような時間の積み重なりがあります。

約2億7,000万年は、完成した年齢ではない
ユネスコは石林の特徴的な地形について、ペルム紀以降、約2億7,000万年にわたり、四つの主要な地質時期を通して発達してきたと説明しています。この数字だけを見ると、目の前の石柱がすべて約2億7,000万年前に完成し、そのまま立ち続けているようにも思えるかもしれません。
しかし、示されているのは、石林という地形が発達してきた長い時間の規模です。岩石ができた時期、地形が変化した時期、個々の岩柱が露出した時期は、同じ一つの「誕生日」ではありません。今見えている一本一本の岩柱について、完成した年をこの数字から読み取ることはできないのです。
遠くから見ると静止しているような石の森も、長い地質の時間の中では、環境が変わるたびに異なる作用を受けてきました。その履歴が一様でないことは、石林の地区ごとに異なる岩の姿にも表れています。
場所によって違う岩の表情、守られる地形
雲南石林には、よく知られる大石林だけでなく、乃古石林など異なる特徴を持つ地区があります。乃古石林では比較的暗い色の白雲質石灰岩が特徴とされ、岩の色や見え方は大石林と同じではありません。「石の森」という一つの名前の中にも、岩質や形の異なる景観が含まれています。
その地質学的価値は、珍しい見た目だけで評価されているわけではありません。石林の構成地区は2007年、世界自然遺産「中国南部カルスト」の一部として登録されました。石林は、尖った岩峰が集まるカルスト地形を理解するうえで、国際的にも重要な参照地とされています。
価値ある地形を残すための取り組みも続いています。雲南省の行政機関は2025年に石林の監視や保護活動を報告し、2026年6月の現地報道でも、地域の巡察や地理情報を活用した監視が紹介されました。長い地質の歴史を記録する岩の姿は、現在の人々による保全の対象でもあるのです。
森のように立つ岩柱を眺めると、つい地上に見えている部分だけで、その形の不思議さを考えてしまいます。けれども、石林の輪郭を読み解くには、今は見えない地面の下や、はるか昔の環境にまで視野を広げなければなりません。現在の景観は、岩がたどってきた時間のすべてを一度に見せているわけではないのです。
参考資料・出典
- South China Karst|UNESCO World Heritage Centre
- Decision 31 COM 8B.11|UNESCO World Heritage Committee
- Shilin UNESCO Global Geopark|UNESCO
- Major stone forest, litomorphogenesis and development of typical shilin (Yunnan, China)|Martin Knez・Tadej Slabe・Hong Liu, Acta Carsologica (2012)
- 强化自然遗产保护 守护人类自然珍宝|雲南省林業草原局(2025年)
- 云南石林世界自然遗产地走好保护与发展之路——万峰竞秀添异彩|雲南日報・雲新聞(2026年)





