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ヤンマイエン島|滑走路があっても行きにくい北大西洋の火山島

ヤンマイエン島、孤高の火山と滑走路 立入困難・隔絶された場所

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滑走路があるのに行けない島――北大西洋のヤンマイエン島

北大西洋の北極圏に、飛行場があり、道路があり、毎日人が働いているのに、一般旅行者にはきわめて近づきにくい島がある。

ヤンマイエン島(Jan Mayen)は、ノルウェー本土から西へ約1,000キロ、アイスランドから北東へ約550キロ離れた火山島だ。長さは約53キロ。島には軍関係者や気象観測員などが交代制で勤務しているが、恒久的な住民はいない。

つまり、完全な無人島ではない。それでも「行くこと」は難しい。

理由は単純な遠さだけではない。商業定期便がなく、安全な港もなく、島のほぼ全域が自然保護区であるうえ、上陸や移動にも厳しい制約があるからだ。そして、その厳しい環境の中心には、今も活動を終えていない火山がそびえている。

北大西洋のヤンマイエン島と氷河に覆われたベーレンベルク山
北大西洋に浮かぶヤンマイエン島と、島北部にそびえるベーレンベルク山。
写真:Beerenberg Jan Mayen.JPG/作者:Dreizung/ライセンス:CC BY-SA 3.0

飛行場があっても、観光客は乗ってこられない

ヤンマイエン島には砂利敷きの滑走路がある。しかし、一般旅行者向けの商業便は運航されていない。

島の施設は観光地として造られたものではなく、軍や気象観測、通信、研究などを支えるためのものだ。基地の中心となるオロンキンビエン(Olonkinbyen)には勤務者の宿舎などが置かれているが、旅行者向けのホテルや通常の観光インフラがあるわけではない。

船で近づく場合も簡単ではない。

ヤンマイエン島には、外洋から船を安全に迎え入れる天然の良港がない。一般的な訪問船の上陸地点は西岸のクヴァルロスブクタ(Kvalrossbukta)にほぼ限られ、岸壁に横付けするのではなく、小型艇などで海岸へ上陸する形になる。

しかも、上陸予定が組まれていても、海況や天候、基地の運用、安全上の理由で中止されることがある。

「交通手段が少ない秘境」なのではなく、そもそも一般旅行を前提にした交通体系が存在しないのである。

島のほぼ全域が自然保護区

行きにくさには、もう一つ重要な理由がある。

2010年、ヤンマイエン島のほぼ全域と広い周辺海域が自然保護区に指定された。保護対象は、北極圏の島嶼環境だけではない。活火山、海鳥、海獣、植物、文化遺産が守られ、周辺海域を研究にとって重要な環境として保つことも、保護目的に含まれている。

そのため、保護区内では上陸、キャンプ、車両利用、航空機の着陸などに強い制約がある。

島全体が完全な立入禁止区域というわけではないが、自由に歩き回れる観光地とは正反対だ。外国人の滞在には、期間に応じて基地指揮官や警察当局などの許可が必要になり、船舶側にも事前の手続きが求められる。

さらに2026年現在は、島の基地で大規模な建設工事が続いている。公式案内では、2025年夏から2027~2028年の冬にかけて、安全上の理由から訪問や到着が強く制限されるとしている。

ヤンマイエン島の隔絶は、地理的な距離、自然条件、行政上の規制が重なって生まれている。

島の北半分を支配する活火山

ヤンマイエン島の姿を決定づけているのが、北部にそびえるベーレンベルク山(Beerenberg)である。

2023年のノルウェー極地研究所による再測量では、標高は2,272メートル。山頂部は氷河に覆われ、周囲には20を超える氷河が発達している。

ベーレンベルク山は、すでに活動を終えた古い火山ではない。ヤンマイエン島では1970年と1985年にも噴火が確認されている。

とくに1970年の噴火は、この島が今も形を変え続けていることを強く示した。

島北東部の約5キロにわたる割れ目帯から溶岩が噴き出し、4週間以上にわたって流出した。噴出した溶岩は約0.5立方キロメートルとされ、海岸には4平方キロメートルを超える新しい陸地が生まれた。

ところが、その新しい土地の半分以上は、数年のうちに波で削られて失われた。

火山が島を広げ、海がすぐに削り返す。

ヤンマイエン島では、島の輪郭そのものが完成品ではない。

4,000万年前の海底構造の上にある、若い島

ヤンマイエン島周辺の地質は、北大西洋の拡大とプレート境界の複雑な動きに関係している。

周囲には古い大陸地殻の断片を含むヤンマイエン海台があり、その形成史は約4,000万年前までさかのぼる。一方、現在の島で地表に露出している火山岩ははるかに若い。

査読研究では、露出岩石はおおむね約46万年前から現在までのものとされ、全体として70万年より若いと整理されている。

つまり、「4,000万年前から同じ島がそこにあった」わけではない。

古い海底地形や地殻構造の上で、比較的新しい火山活動によって現在のヤンマイエン島が築かれたのである。

この違いは、島の成り立ちを理解するうえで重要だ。

山の標高が「5メートル低くなった」

ベーレンベルク山には、少し意外な話もある。

長く使われてきた標高は2,277メートルだったが、ノルウェー極地研究所が新しい地形図を作るために行った2023年の測量で、最高地点は2,272メートルとされた。

数字だけを見ると「山が5メートル低くなった」ように見えるが、これは短期間に山体が5メートル沈んだという意味ではない。1990年の旧測量値が、新しい測量によって更新されたものだ。

それでも、現代の地図上でさえ、この島の基本的な数値が更新されているという事実は面白い。

なお、国際的な火山データベースには別の標高値も残っており、資料間で数値は完全には一致していない。本記事では、最新のノルウェー極地研究所による再測量値を採用する。

「無人島」ではなく、交代で人が暮らす島

ヤンマイエン島には恒久的な住民がいない。しかし、人間の生活が途切れているわけでもない。

ヤンマイエン島のオロンキンビエンにある研究・観測基地の施設
ヤンマイエン島で研究・観測などを支えるオロンキンビエンの基地施設。
写真:Jan mayen-station hg.jpg/作者:Hannes Grobe(Alfred Wegener Institute)/ライセンス:CC BY-SA 2.5

2026~2027年度のノルウェー政府予算資料では、ノルウェー軍のサイバー防衛部門が運営する基地職員15人が島に常時勤務し、原則として約6か月ごとに交代するとされている。これとは別に、ノルウェー気象研究所が給与を負担する職員2人も基地の要員に加わる。

工事関係者や一時的な訪問者もいるため、その時点の島内人数は一定ではない。

ここで重要なのは、ヤンマイエン島を単純に「人口17人の島」と考えないことだ。

住民社会が世代を超えて続いているのではなく、国家機関の任務を担う人々が一定期間滞在し、次の隊員へ交代していく。生活空間はあるが、通常の町とは性格がまったく違う。

この「人はいるが、住民はいない」という状態が、ヤンマイエン島をさらに特殊な場所にしている。

17世紀、越冬した7人は全員戻らなかった

人間がこの島に滞在しようとした歴史は古い。

17世紀前半、ヨーロッパの捕鯨業者はヤンマイエン島に陸上基地を築いた。北極海域で捕獲したクジラを処理するためである。

1633年には、捕鯨施設を守るため、オランダ人7人が島で越冬した。しかし翌年までに、7人全員が壊血病で死亡したと記録されている。

当時の北極圏越冬では、新鮮な食物の欠乏が致命的だった。現在は航空機や通信施設のある島だが、近代的な補給網がない時代、この場所で冬を越すことはまったく別の意味を持っていた。

その後、1882~1883年には国際極年に関係する科学隊が越冬観測を実施し、1921年にはノルウェーの気象観測所が設けられた。

捕鯨の島から、観測と研究の島へ。

ヤンマイエン島に人が滞在する理由は、数世紀のあいだに大きく変わってきた。

今も「行く場所」より「観測する場所」

現在のヤンマイエン島では、気象観測、通信・航法施設の運用、軍・政府施設の維持、科学研究などが続いている。

一方で、訪問者向けの宿泊施設や専用医療サービス、一般観光客向けの救助体制が整っているわけではない。島内道路の一部は冬季の悪条件で閉鎖され、周辺海域や海岸の状況も安定しない。

そこに活火山があり、氷河があり、海鳥や海獣の繁殖環境があり、地質学的にも重要な記録が残されている。

だからこそ、ヤンマイエン島は観光開発によって「行きやすくする」よりも、観測と保全を優先して維持されてきた。

滑走路があるのに、自由には飛んでこられない。

人が暮らしているのに、町ではない。

火山が陸地を増やしても、海がまた削り取る。

ヤンマイエン島の隔絶は、単に「遠い島だから」ではない。自然の厳しさと、そこを守りながら利用しようとする人間の制度が重なった結果なのである。

参考資料・出典

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