
Photo: Stephan Getzin / University of Göttingen
上空から見ると、赤褐色の大地に丸い裸地がいくつも浮かんでいる。草が途切れているだけなら、それほど奇妙ではない。だが西オーストラリア州ピルバラの一部では、その裸地が似たような大きさを保ち、互いに一定の距離を置くように並んでいる。場所によっては、六角格子を思わせるほどの規則性まで現れる。
円の直径は典型的には4メートルほど。中心が深くえぐれた穴ではなく、周囲のスピニフェックス草原から植物だけを取り去ったような硬い地面である。これほど整った配置が偶然に生まれたとは考えにくい。

Photo: Stephan Getzin / University of Göttingen
では、何がこの間隔を作ったのか。植物なのか、水なのか、それとも地面の下にいる生物なのか。ピルバラのフェアリーサークルをめぐる研究は、一度答えが見つかったように思えるたびに、その問い自体が変わってきた。
赤い大地に、同じような円が並んでいる
研究対象になったフェアリーサークルは、西オーストラリア州東ピルバラの鉱山都市ニューマン周辺にある。乾燥した平地にはTriodia basedowiiなどのスピニフェックスが広がり、その中に植物のない円形の裸地が点々と現れる。
目立つのは、円そのものよりも配置の規則性だ。裸地が適当に散らばっているのではなく、隣り合う円との距離がある程度そろっている。広い範囲を上空から見ると、それぞれの円が周囲に複数の隣接円を持ち、周期的な模様を作っていることが分かる。
この特徴は、アフリカ南西部のナミブ砂漠周辺で知られていた「フェアリーサークル」とよく似ていた。そこで2016年、研究チームはオーストラリアにも同種の空間パターンが存在すると報告した。
ただし、地面に巨大な力が加わって円形の穴が開いたわけではない。問題はもっと静かだった。なぜ、草が生える場所と生えない場所が、これほど整然と分かれるのか。その説明として最初に強く提示されたのが、水と植物の相互作用だった。
最初の有力な答えは「植物自身が模様を作る」だった
ピルバラは水の乏しい環境である。雨が降っても、どこにでも同じように水が残るわけではない。
2016年の研究が注目したのは、裸地と草地で水の浸透しやすさが異なることだった。植物のない地面では表面が硬くなりやすく、強い雨が降ると水の一部がその場に浸透せず、周囲へ流れる。一方、草が生えている場所では根や土壌構造の影響によって水が入りやすい。
すると、すでに草がある場所には裸地から水が集まり、植物はさらに成長しやすくなる。逆に、そこから離れた場所は水を得にくくなり、植物が定着しにくい。個々の植物が円を設計しているわけではない。それでも、水をめぐる競争と植物が環境を変える作用を繰り返せば、景観全体には規則的な模様が現れうる。

こうした現象は「自己組織化」と呼ばれる。外から誰かが配置を決めなくても、構成要素同士の相互作用だけで秩序だったパターンが生まれるという考え方だ。
その後の研究も、この説明を補強した。2019年にはフェアリーサークル内部の土壌が周囲の草地より硬く、粘土分も多いことが報告された。研究チームは154か所を掘削し、そのうち139か所では、植物の生育を妨げるような硬いシロアリの舗装状巣構造を確認できなかったとしている。
さらに、2020年にオンライン公開され、2021年のJournal of Ecologyに掲載された研究では、ドローンによる植生観測や土壌水分の測定が組み合わされた。裸地が降雨時の水の供給源となり、その周辺の草が水を得るという関係は、自己組織化モデルが予測した仕組みと整合していた。
ここまでを見ると、かなり説得力がある。円は地中の何者かが一つずつ作ったのではなく、乾燥地で限られた水を奪い合う植物が、結果として巨大な点模様を作ったように思える。
ところが、シロアリの話は消えていなかった。
地面を掘ると、円の下から別の答えが現れた
シロアリを原因として考える意見は、2016年の発表直後から出ていた。オーストラリアの乾燥地には、Drepanotermes属の草食性シロアリが地下に巣を作り、地表に平らで硬い「舗装」のような構造を生じさせる場所が知られていたからだ。
さらに、この話には西洋科学の論争だけでは見えにくかった背景があった。
オーストラリアのFirst Peoplesは、こうした裸地状の構造を研究者よりはるか以前から知っていた。MartuのManyjilyjarra語では「linyji」、Warlpiri語では「mingkirri」などと呼ばれる舗装状の場所があり、シロアリとの関係も世代を超えて伝えられてきた。硬い地面は食物を処理する作業面などにも利用され、文化や生活の中に組み込まれていた。
つまり、2016年に学術論文でオーストラリアの「フェアリーサークル」が報告されたからといって、それが人間にとって未知の現象だったわけではない。
2023年、この知識と土壌調査を組み合わせた研究がNature Ecology & Evolutionに発表された。研究チームは、ニューマン東方で以前のフェアリーサークル研究にも使われた8区画のうち4区画を調査し、24個の円に計60本のトレンチを掘った。
結果は鮮明だった。60本すべてで、硬く締まった土の内部からシロアリの部屋が確認された。空洞だけではなく、シロアリが運び込んだ草片や排泄物が残る部屋もあり、41%のトレンチでは生きた草食性シロアリDrepanotermes pernigerも見つかった。
植物と水だけで説明されたように見えていた円の地下に、確かにシロアリの構造があった。
しかも、それは突然現れた新しい手掛かりではない。現地の人々は、その関係を以前から知っていたのである。
では、答えは決まったのだろうか。フェアリーサークルとは、結局のところシロアリの巣だったのか。
それでも「シロアリで解決」とはならなかった
2023年の結果は、シロアリを単なる偶然の同居者として片づけることを難しくした。一方で、それまで自己組織化を研究してきた側も、「シロアリが見つかった」という一点だけで原因論が決着したとは認めていない。
2024年、自己組織化説を支持してきた研究者たちはNature Ecology & Evolutionで再反論した。彼らがニューマン東方で「フェアリーサークル」と呼んできたのは、単に丸い裸地なら何でもよいわけではなく、極めて規則的で周期的な配置を示す特定のパターンだという。
その立場では、オーストラリア各地に広く存在するシロアリ由来のlinyjiと、ニューマン付近の高度に規則的なフェアリーサークルは区別される。大きさや空間的な秩序が異なり、シロアリの巣が存在することだけでは、景観全体に六角格子に近い配置が生まれる理由を説明できないという主張だ。
これに対し、2023年の研究チームも同じ年に再び反論した。調査した規則的な裸地の地下には実際にシロアリ構造が存在しており、linyjiをフェアリーサークルから切り離すべきではないという立場を維持している。
ここで論争の形が変わる。
もはや「シロアリがいるか、いないか」だけではない。シロアリが円を作ったのか、すでに形成された場所を利用しているのか。植物と水が規則的な間隔を生み出し、そこへシロアリが加わったのか。あるいは、シロアリの活動と水・植物の作用が長い時間をかけて一つの景観を作ってきたのか。
さらに、「フェアリーサークル」という言葉で、どこまで同じ現象をひとまとめにしてよいのかという問題まで含まれている。
一つの円に、一つの原因があるとは限らない
現在までの研究を見ると、確かめられていること自体は少なくない。
裸地の表面や浅い土壌には、周囲の草地とは異なる硬さや土壌特性がある。雨が降れば、水は裸地と植生の間を均等には移動しない。周囲の草はその水分に反応し、植生自身も土壌環境を変える。
一方、2023年に調査された舗装状裸地の地下には、シロアリの部屋が確実に存在していた。First Peoplesが伝えてきた知識と、現代の掘削調査が一致した部分である。
問題は、こうした事実をどの順番で「原因」と呼ぶかだ。
例えば、裸地から周囲へ水が流れることが確認されたとしても、それだけで裸地が最初にどう生まれたのかまで分かるわけではない。反対に、円の地下からシロアリの巣が見つかっても、そのシロアリ活動だけで広大な草原に一定間隔の配置が生じることまで自動的に証明されるわけではない。

2025年にフェアリーサークル研究全体を整理したレビューでも、シロアリ起源と植生の自己組織化は依然として主要な説明として比較されている。著者らが強調したのは、これまで相関関係の観察が多く、原因そのものを操作して確かめる実験がまだ不足していることだった。シロアリを除いたときに円がどう変わるか、水や栄養条件を変えたときにパターンがどう応答するか。そうした実験と長期観測が、次の決着には必要になる。
ピルバラの円は、何も分かっていない「完全な謎」ではない。むしろ、水、植物、土壌、シロアリについて個別の証拠が増えた結果、それぞれがどの段階で作用するのかという、より細かな問題が残った。
本当に残っている謎は「円の正体」ではない
赤い地面だけを見れば、フェアリーサークルは単純に見える。草が生えていない丸い場所が、いくつも並んでいるだけだ。
研究が進むにつれ、その一つの円に複数の姿が重なってきた。水を周囲へ流す裸地であり、植物同士の競争から生まれる空間パターンの一部でもあり、調査された場所ではシロアリの部屋を抱えた硬い舗装でもある。そしてFirst Peoplesにとっては、科学者が名前を付けるより前から知られ、利用されてきた土地の一部でもあった。
残っている問いは、「この円は何なのか」と一言で答えられるものではない。
何が最初に裸地を生み、何が一定間隔の配置を作り、何がその状態を長く維持するのか。その過程のどこまでを植物と水で説明し、どこからシロアリの働きを加えるべきなのか。さらに、異なる成り立ちを持つ裸地を同じ「フェアリーサークル」と呼んでいる可能性はないのか。
上空から見える円は変わらない。それでも、研究史を知ったあとでは、その景色は最初と同じものには見えにくい。
不思議なのは、科学がまだ何も知らないことではない。調べるほどに、水か植物かシロアリかという単純な選択では説明できなくなり、「原因」とは何を指すのかまで問い直されていることである。
参考資料・出典
- Discovery of fairy circles in Australia supports self-organization theory(PNAS, 2016)
- Fairy circles or ghosts of termitaria? Pavement termites as alternative causes of circular patterns in vegetation of desert Australia(PNAS, 2016)
- A multi-scale study of Australian fairy circles using soil excavations and drone-based image analysis(Ecosphere, 2019)
- Bridging ecology and physics: Australian fairy circles regenerate following model assumptions on ecohydrological feedbacks(Journal of Ecology, 2021)
- First Peoples’ knowledge leads scientists to reveal ‘fairy circles’ and termite linyji are linked in Australia(Nature Ecology & Evolution, 2023)
- Australian fairy circles and termite linyji are not caused by the same mechanism(Nature Ecology & Evolution, 2024)
- Reply to: Australian fairy circles and termite linyji are not caused by the same mechanism(Nature Ecology & Evolution, 2024)
- Fairy circle research: Status, controversies and the way forward(Perspectives in Plant Ecology, Evolution and Systematics, 2025)





