
衛星画像でボリビア南西部を眺めると、赤褐色のアンデス高地の中に、そこだけ色を失ったような巨大な白い面が現れる。輪郭は湖のようにも見えるが、内部には青い水面がほとんどない。山々に囲まれた高原の中で、白だけが異様なほど広く、平らに広がっている。
これがウユニ塩湖、スペイン語でサラール・デ・ウユニと呼ばれる場所だ。面積は約1万平方キロメートル。標高約3650メートルのアルティプラノに広がる、世界最大の塩類平原として知られている。
地上では「天空の鏡」の名で有名になった場所だが、上空から見ると別の疑問が浮かんでくる。なぜ山に囲まれた内陸に、これほど巨大で、しかも不自然なほど平らな白い面ができたのだろう。
アンデスの中に浮かぶ、巨大な白い平面
ウユニ塩湖の白さを作っているのは、雪ではない。地表を覆う塩の殻だ。
乾燥する時期の衛星画像では、周囲の山地や扇状地が褐色や灰色の複雑な模様を見せるのに対し、塩原の中心部は驚くほど均一な明るさを保っている。約1万平方キロメートルという広さを考えると、その白い面は一つの地形というより、地図の一部を白く塗りつぶしたようにも見える。
「塩湖」という日本語名から、水をたたえた湖を想像すると少し様子が違う。ウユニの大部分は一年を通して湖水に覆われているわけではなく、乾燥期には塩の地表が露出する。だから衛星から見ても、青い湖というより巨大な白い大地として姿を現す。
では、観光写真で知られる鏡のような景色は何なのだろう。
「塩湖」なのに、水が見えない
アルティプラノの雨季になると、ウユニ塩湖の一部には非常に浅い水が広がる。塩原そのものが極端に平らなため、水深がわずかでも広い範囲に薄く水が行き渡り、空や雲を反射する巨大な鏡が生まれる。

Photo: Josep M. Gracia / Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0
つまり、乾いた白い塩原と、空を映す水面は別々の場所ではない。同じウユニ塩湖が、季節と降雨量によってまるで異なる姿を見せている。
NASAが公開した衛星画像では、その違いが地上写真以上にはっきり分かる。乾燥していた2021年8月には白かった部分が、雨の多かった2022年2月には広く水に覆われていた。鏡張りは一年中続く固定した景観ではなく、浅い水が広がったときに現れる一時的な表情なのである。

Image: NASA Earth Observatory / Terra MODIS, using MODIS data from NASA EOSDIS LANCE and GIBS/Worldview / A Salt Bath in Bolivia, NASA Images and Media Usage Guidelines
もっとも、水があるかないかだけでは、あの巨大な白い平面が生まれた理由までは説明できない。その手掛かりは、現在の地表よりはるか下に残されている。
巨大湖は一度消えただけではなかった
ウユニ塩湖があるアルティプラノは、アンデス山脈の隆起に伴って形成された高原である。周囲を山に囲まれ、この地域の水は海へ直接流れ出にくい。雨や雪解け水が盆地へ集まり、主に蒸発によって失われる内陸流域だ。
現在より湿潤だった時代には、この地域に大きな湖が広がった。やがて乾燥すると湖は縮小し、水に溶けていた塩類が取り残される。こうした説明だけなら、「昔の巨大湖が一度干上がり、ウユニ塩湖になった」と考えたくなる。
しかし、地下の記録はもっと複雑だった。
ウユニ塩湖中央部から採取された長さ約121メートルのコアでは、12の塩層と、その間に挟まれた11の湖成層が確認されている。塩が堆積した時期と、水をたたえた湖の時期が交互に記録されているのである。

現在のウユニは、一つの湖が消えた痕跡というより、湖が広がる時代と乾燥する時代を何度も経験してきた結果と見る方が実態に近い。過去の湖では、先行する時期に堆積した塩の一部が再び溶け、それが次の塩の堆積へ受け継がれる過程も起きていたと考えられている。長い時間の反復の末に、広大な塩の平面が残された。
それでも、もう一つ奇妙な点がある。塩原は広いだけではない。地表の凹凸そのものが、普通の大地とは比較にならないほど小さい。
平らすぎる大地は、人工衛星を測る場所になった
欧州宇宙機関ESAは、ウユニ塩湖全体の地表高度の変化を1メートル未満と説明している。どこまでも平らに見えるという印象は、単なる錯覚ではない。
その特徴に目をつけたのが、地球を宇宙から測る研究者たちだった。
2002年9月、NASAの研究チームはウユニ塩湖の約54キロメートル×45キロメートルの範囲を車載GPSで測量し、地表の詳細な標高モデルを作成した。その後、2003年9月から2004年7月にかけて同じ区域を通過したICESatのレーザー高度計GLASによる6回の観測データを、この地上測量の標高モデルと比較した。

目的は、人工衛星から測った高度がどれほど正確なのかを確かめることだった。
通常、人工衛星は地球を測る側にいる。ところがウユニでは、あまりに広く平らな地表そのものが基準となり、人工衛星の測定精度を確かめる側に回った。
ウユニ塩湖は高度計だけに使われてきたわけではない。USGSは現在も塩原の一部を衛星センサーの校正試験区域として登録している。乾燥期には広く均質で安定した高反射面になるため、放射計測などの校正にも適している。
観光写真では空を映す鏡として知られる場所が、宇宙観測の世界では巨大な基準面として利用されている。衛星画像で見たときの不自然なほどの平らさは、景観上の特徴だけではなかったのである。
そして現代の衛星は、その白い面に新しい模様が現れていることも記録している。
白い大地に現れた人工の幾何学模様
ウユニ塩湖の塩殻の下には塩分濃度の高い水、ブラインが存在し、そこにはリチウムをはじめとするさまざまな成分が含まれている。
塩原南部を写した衛星画像を見ると、自然地形とは明らかに異なる直線と長方形が並んでいる場所がある。リチウムを含むブラインをくみ上げ、濃縮するために造られた蒸発池だ。
NASAのLandsat画像では、2013年から2019年までの間に施設が大きく拡大した様子が確認できる。ESAのSentinel-2画像にも、白い塩原の縁に幾何学的な蒸発池がはっきり写っている。山、川が作った扇状地、真っ白な塩原、人工的な長方形が、一枚の衛星画像の中に並ぶ。

Image: Lauren Dauphin / NASA Earth Observatory, using Landsat data from the U.S. Geological Survey / Lithium Harvesting at Salar de Uyuni, NASA Images and Media Usage Guidelines

Image: Lauren Dauphin / NASA Earth Observatory, using Landsat data from the U.S. Geological Survey / Lithium Harvesting at Salar de Uyuni, NASA Images and Media Usage Guidelines
ウユニ塩湖を宇宙から眺める面白さは、単に巨大だからでも、白くて珍しいからでもない。
最初に見えたのは、アンデスの中に浮かぶ正体の分からない白い平面だった。しかしその白さの下には、湖と乾燥を繰り返してきた長い気候の記録が重なっている。地表の平坦さは人工衛星の測定精度を確かめる基準となり、現在では資源開発による人工的な模様まで宇宙から追うことができる。
同じ白い面を見ているはずなのに、そこに見えるものはもう最初とは違う。ウユニ塩湖は、過去の湖が残した痕跡であると同時に、現在の地球を宇宙から測るための基準面であり、人間が地表を書き換えていく様子まで記録される場所なのである。
参考資料・出典
- NASA Earth Observatory – A Salt Bath in Bolivia
- NASA Earth Observatory – An Expanse of White in Bolivia
- NASA Earth Observatory – Lithium Harvesting at Salar de Uyuni
- NASA Technical Reports Server – Validation of GLAS Range Measurement over Salar de Uyuni, Bolivia
- USGS EROS Cal/Val Center of Excellence – Uyuni Salt Flats
- ESA – Uyuni salt flat, Bolivia
- Dating of paleolakes in the central Altiplano of Bolivia
- Bromine geochemistry of salar de Uyuni and deeper salt crusts, Central Altiplano, Bolivia





