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ナミブ砂漠のフェアリーサークルはなぜできる?二つの有力説と残る謎

ナミブ砂漠に広がる多数のフェアリーサークルと、シロアリ説・水分競合説を示す図解を組み合わせた現象解説のサムネイル画像 正体不明・未解明

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ナミブ・ナウクルフト国立公園の乾燥草原に多数並ぶフェアリーサークルを上空から見た景観
ナミブ・ナウクルフト国立公園で2017年に撮影されたフェアリーサークルの空撮。
Photo: Olga Ernst & Hp.Baumeler / Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0

上空から眺めると、乾いた草原の中に無数の円が浮かんでいる。中央だけ草がなく、その周囲には植生が残る。大きさも間隔も妙にそろっていて、自然にできたというより、誰かが地面に印を付けていったようにも見える。

アフリカ南西部、ナミブ砂漠沿いに広がる「フェアリーサークル」だ。多くは数メートル規模の円形裸地で、密集地では一つ一つの円よりも、それらが作り出す景観全体の規則性が目を引く。無作為に草が枯れただけとは思いにくい配置である。

では、何がこれほど大量の円を作っているのだろう。半世紀近く研究されてきたにもかかわらず、その形成機構には今も議論が残る。ただし、これは「科学でも何も分からない怪現象」という意味ではない。研究が進んだ現在、分かっていることが増えたからこそ、最後まで決着していない部分が以前よりはっきり見えるようになっている。

砂漠に並ぶ、無数の円

フェアリーサークルが目立つのは、砂丘だけが続く場所ではなく、砂質の地面を草がまばらに覆う乾燥草原である。円の中央にはほとんど植物がなく、縁では周囲より背の高い草が生えることもある。典型的な直径は数メートルで、地域によって大きさには差がある。

ダマラランドの乾燥草原に円形の裸地が点在するフェアリーサークルの景観
ナミビア・ダマラランドのAba Huab Valleyに見られるフェアリーサークル。
Photo: Lidine Mia / Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0

しかも、珍しい円が数個だけ存在するわけではない。2023年にナミビア北西部のGiribesで衛星画像と機械学習を用いて調べた研究では、25平方キロメートルの範囲から約1万4500個のフェアリーサークルが抽出された。それほど大量に存在しながら、それぞれの円は互いに一定の距離を保つような規則性を示す。

この配置が、原因を考えるうえで厄介な点だった。動物が地面を掘っただけなら、なぜ広範囲で似た形が繰り返されるのか。植物が偶然枯れただけなら、なぜ裸地は円に近づき、隣の円との間隔まで整って見えるのか。どんな原因を提案しても、中央の裸地だけでなく、景観全体の規則性まで説明しなければならない。

さらに長期間追跡すると、最初の印象をもう一つ崩す事実が見えてくる。これらの円は、地面に一度刻まれたまま残る固定的な跡ではない。

円は生まれ、そして消える

異なる年代の衛星画像を比較すると、それまで何もなかった場所に新しい円が現れる一方、古い円の中へ草が戻り、輪郭が消えていくことがある。フェアリーサークルには、誕生から消失までの変化がある。

2012年にウォルター・チンケルが発表した研究では、円の出現と消失から平均寿命がおよそ41年と推定された。別の方法では約60年という推定値も得られており、小さな円より大きな円の方が長く残る可能性も示された。したがって「一つの円は60年間存在する」と固定的に考えるべきではないが、少なくとも数十年にわたって同じ円が景観に残る場合がある。

この寿命推定には、NamibRand Nature Reserveで行われていた変わった取り組みも役立った。保全活動への寄付としてフェアリーサークルを「養子」にできる制度では、選ばれた円に番号が付けられ、正確なGPS座標が記録される。チンケルは、以前に記録されていたこうした円を数年後に再確認し、まだ明瞭に残っているものと再植生したものを寿命推定に利用した。

円の状態は雨にも左右される。2020年から2023年に同じ調査地をドローンで繰り返し観測した研究では、十分な降雨の後、成熟したフェアリーサークルの内部に草が戻り、裸地が閉じていく例が多数確認された。雨が少なくなれば逆方向の変化も起こりうる。

フェアリーサークルが形成・成熟し、多雨後に再植生して輪郭が不明瞭になる状態変化と数十年規模の寿命を示した模式図
模式図。フェアリーサークルは固定された穴ではなく、降雨などに応じて再植生・不明瞭化することがある。個々の円が必ず同じ順序で変化することを示すものではない。

ここまで分かると、フェアリーサークルを単純な「何かが残した穴」と見ることは難しくなる。その姿は、雨、水、植物の成長に応じて変化する。原因を探すなら、地面の下に一度起きた出来事だけでなく、乾燥地の生態系そのものを見る必要がある。

原因を追って消えていった仮説

フェアリーサークルの説明としては、これまで数多くの案が出されてきた。その一つが、ナミビアに生えるトウダイグサ科の Euphorbia damarana だった。植物が枯れた後も成分が土壌に残り、周囲の草の生育を妨げるため、丸い裸地になるのではないかと考えられたのである。

この説は、長期間を隔てた再調査によって厳しく試された。約40年前に位置が記録されていた枯死したEuphorbiaを調べても、その場所はフェアリーサークルになっていなかった。枯れた植物とフェアリーサークルでは大きさや空間配置も一致せず、Euphorbiaを主要原因とする説明は支持されなくなった。

地下から漏れ出すガスや揮発性物質も疑われた。そこで2009年から始まった現地実験では、円の地下にガスや水を通しにくい障壁を埋め、植物の発芽や生育が変化するかが長期間調べられた。しかし、障壁を設置した円と対照区の間には、仮説が予想するような違いが現れなかった。同じ実験では土壌そのものの植物抑制作用や微量栄養素不足も検討されたが、やはり決定的な原因とはならなかった。

研究史を追うと、フェアリーサークルの謎が「何でもあり」の状態から少しずつ絞り込まれてきたことが分かる。検証できる仮説は実験にかけられ、説明できない性質があれば後退していった。その結果、現在の論争では二つの説明が特に重要な位置を占めている。

一つは、植物と水の相互作用から円が自発的に生まれるという考え方。もう一つは、砂の中で暮らすシロアリが植物を取り除いているという考え方である。

植物が自分で円を作るという説

雨が極端に少ない乾燥地では、水は植物にとって限られた資源になる。ある場所で草が水を吸収すれば、その近くで別の草が利用できる水は減る。一方、植物が密集している場所では根や土壌の状態も変わるため、植物と水の分布は互いに影響し合う。

こうした作用が広い範囲で続くと、植生が均等に薄く広がるのではなく、草が残る場所と裸地が規則的に分かれる場合がある。個々の植物が円を作ろうとしているわけではない。多数の植物と限られた水の相互作用から、個体よりはるかに大きな模様が自然に現れる。この考え方が「植生の自己組織化」である。

ナミビアでは、この説明を支持する現地観測が蓄積されてきた。2022年の研究では、雨後にフェアリーサークル内部で発芽した若い草を掘り出して調べたところ、根を食べられた明瞭な痕跡がないまま枯れる例が多数確認された。土壌水分の測定からは、周囲の草による水利用によって円内の表層土壌が急速に乾燥し、若い草が水ストレスで枯れるという解釈が示された。

その後の調査でも、降雨と円の変化は重要な手掛かりになった。2024年の研究では、深い風成砂があり、水が比較的均一に浸透する場所ほどフェアリーサークルの空間配置が規則的になる傾向が報告されている。雨量が多い期間に裸地へ草が戻るという観測も、植物と水の関係を中心に置く説明と整合する。

自己組織化説は、単に「なぜ草が枯れるか」だけではなく、「なぜ大量の円が規則的な間隔で並ぶのか」まで説明しようとする点に強みがある。しかし、モデルや水分分布と現実の地下過程が完全に結び付いたわけではない。数メートル離れた植物間で水や栄養が実際にどう移動し、その作用が円の誕生につながるのかを直接確かめる実験は、なお重要な課題として残っている。

そして、この説明そのものに異議を唱える研究者たちもいる。

もう一つの主役候補、砂シロアリ

フェアリーサークルの地下では、砂地に生息するシロアリ Psammotermes allocerus が繰り返し確認されてきた。2013年、植物生態学者ノルベルト・ユルゲンスは、この砂シロアリこそ円の形成と維持を説明する主要な存在だとする研究をScience誌に発表した。

シロアリが雨後に生えた植物の根を食べれば、円の中央から植生が失われる。植物がなくなれば蒸散も減るため、雨水が砂の中に長く残りやすくなる。その水を利用することで、シロアリは長い乾燥期にも生存でき、裸地の周囲にはより大きな多年草が育つ――これがシロアリ説の基本的な仕組みである。

この仮説は、古い説として消えたわけではない。2022年に水ストレスと自己組織化を支持する研究が発表されると、2023年にはシロアリ説を支持する研究者側から反論が出た。彼らは長期間の土壌水分データや植物の枯れ方を再検討し、若い草は水不足よりも根への食害によって枯れていると主張した。

論争はそこで止まらなかった。2024年には自己組織化説を支持する側が再び応答し、円内の若い草には根の損傷が見られず、雨後には円内の表層土壌が周囲より早く乾くというデータを示した。フェアリーサークルをめぐっては、「根が食べられたために死ぬのか」「根は無傷のまま水不足で枯れるのか」という、かなり具体的な観測の解釈まで争われている。

どちらか一方が単なる思いつきなら、論争はここまで長く続かなかっただろう。シロアリは実際に確認され、裸地と水分保持を結びつけられる。一方、植生自己組織化は円の規則的な配置や降雨への応答を説明できる。問題は、どちらの説にも現実の一部と結びつく証拠があることだった。

フェアリーサークルの植生自己組織化説と砂シロアリ説について、形成過程と未解決の研究課題を比較した模式図
模式図。植生自己組織化説と砂シロアリ説はいずれも研究中で、フェアリーサークルの形成機構は現在も決着していない。

なぜ二つの説に決着がつかないのか

フェアリーサークルについて分かっている事実は、すでにかなり多い。円の大きさや配置を測定でき、誕生と消失も観察されている。雨が多い時期には裸地へ草が戻ることがあり、場所によってシロアリが存在することも確かめられている。

それでも、「何が円を作ったのか」という因果関係を一つに定めるのは別の問題だ。

2025年に発表された研究レビューでは、現在の主要な説明が砂シロアリと植生の自己組織化という二つの方向に整理された。著者らは、シロアリがすべてのフェアリーサークルで普遍的に確認されるわけではなく、円が数十年間維持されることや大規模な規則配置をシロアリだけで説明するには課題があると指摘している。一方で自己組織化についても、水や栄養が地下でどう移動しているかを直接操作・測定する実験が十分ではないとしている。

つまり、必要なのは似た観測をさらに増やすことだけではない。シロアリを除去・操作した場合に円がどう変化するのか、水や栄養の流れを実際に変えれば模様がどう反応するのか。一方の仕組みなら起こるが、もう一方では起こらない現象を実験で示すことが、決着には重要になる。

しかも、最終的な答えが必ず「植物かシロアリか」の二者択一になる保証もない。植物、水、砂質土壌、シロアリなどの作用が互いに影響し、地域や円の形成段階によって役割の大きさが変わる可能性も残されている。

研究が進んで原因候補が絞られたからこそ、最後の切り分けはかえって難しくなっている。

「完全な謎」ではなくなったあとに残るもの

研究は現在も続いている。2025年には、フェアリーサークルの中央、草の輪、周囲の植生域で土壌線虫の群集を比較した研究も発表された。裸地中央は周囲と異なる環境になっており、地上に見える草の模様だけでなく、地下の生物群集もフェアリーサークルと関係している可能性が調べられている。

それでも、中心的な疑問にはまだ余白がある。最初の裸地はどのような出来事から始まるのか。なぜ不規則な禿げ地ではなく円に近い形になるのか。なぜ隣の円との間隔までそろうのか。そして植物、水、シロアリは、それぞれどこまで原因で、どこからが形成された円への反応なのか。

実際にこの景観を見ることもできる。多数のフェアリーサークルが存在するNamibRand Nature Reserveでは、自然環境への影響を抑えながら観光事業が行われており、訪問者は訓練されたレンジャーやフィールドガイドとともに保護区内を巡る。国立公園を含め、ナミビアの保護地域には区域ごとの立入りや道路利用の規則があるため、訪問時には最新の公式情報を確認する必要がある。

上空から見れば、フェアリーサークルの光景は記事の冒頭と変わらない。砂色の円が互いに距離を保ち、乾いた草原の向こうまで続いている。

ただ、その円を「科学でも説明できない謎」とだけ呼ぶことは、もう難しい。一つの円は数十年にわたって存在し、雨によって草が戻ることがある。植物は限られた水を利用し、その地下ではシロアリを含む生物が活動している。研究者たちは数多くの仮説を検証し、形成機構をめぐる論点をかなり狭いところまで追い込んできた。

フェアリーサークルの中心に残っているのは、何も分からないという巨大な空白ではない。

分かってきた事実に囲まれて、それでもまだ埋め切れずに残っている、小さく深い空白なのである。

参考資料・出典

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